令和8年6月の臨時報酬改定に向けた議論が加速しています。令和8年2月18日の報酬改定検討チームの資料により、今回の改定の全容が見えてきました。今回の改定は、全体的な加算率アップを図りつつ、生産性向上に挑む事業所にはさらなる上乗せを行うという、二段構えの設計になっています。
「まだ様子見でいいだろう」という油断は禁物です。今回の改定は単なる「賃上げ」に留まらず、生産性向上への不退転の決意が込められた設計になっています。今すぐ押さえるべき急所を整理します。

【概要】
✔︎ 加算の対象者:福祉・介護職員→障害福祉従事者に拡大
✔︎ 加算率の引上げ
・月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置を実施
・生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員を対象に、月0.3万円(1.0%)の上乗せ措置を実施
→合計で、福祉・介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げ(定期昇給0.6万円込み)✔︎ 生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分を設ける(加算Ⅰ・Ⅱの加算率の上乗せ)
✔︎ 処遇改善加算の対象外だった計画相談支援、障害児相談支援及び地域相談支援に処遇改善加算を新設
✔︎ ベースアップなどによる更なる賃上げや生産性向上等の取組を後押しするために必要な措置を講ずる
(令和8年6月施行)
1. 全体的な引き上げと加算Ⅰ・Ⅱの「上乗せ区分」

今回のポイントは、処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳの再整理と、加算Ⅰ・Ⅱに新たに設けられる「イ」「ロ」の区分です。
全体が底上げされる中で、加算ⅠとⅡについては賃上げ及び生産性向上や協働化への取り組みに応じて、さらなる上乗せ(区分:ロ)が設定されました。その差は大きくありませんが、今後加速する政策につながる一歩になるかもしれません。
例えば、放課後等デイサービス・児童発達支援だと、「ロ」を選択できれば、最大で2.7%の引き上げとなります。
注目すべきは、今回から相談支援(計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援)も加算対象に加わる点です。業界全体で「賃上げの波」から取り残されない設計になっています。
2. 「令和8年度特例要件」という不退転の決断
「ロ」の算定(上乗せ)を目指す際に避けて通れないのが、以下の特例要件です。
【令和8年度特例要件】
ア・イのいずれか及びウを満たすこと
(ア)職場環境等要件の生産性向上に関する取組を5以上 (⑱㉑必須)
(イ)社会福祉連携推進法人に所属していること
(ウ)加算Ⅱロ相当の加算額の1/2以上を月給賃金で配分
※ア・ウの要件は令和8年度中の対応の誓約で可。
※実績報告書において対応の実施を確認。
※加算Ⅲ・Ⅳも本特例要件に係る記述がありますが、今後の事務処理手順等を確認。
ここで重要なのは、令和8年度に限っては「誓約」で進めることが可能という点です。しかし、これは決して「とりあえず申請」を推奨するものではありません。
実績報告という「出口」を見据える
実績報告書で要件未達が判明した場合、報酬返還のリスクが明記されています。
(*)b・d・e・ア・ウの要件は令和8年度中の対応の誓約で可とし、実績報告書により確認することとしたうえで、未対応が確認された場合には加算額 の一部又は全部を返還させることとする。
特に「月給での配分」は一度決めると下げるのが難しく、労使合意の手続きも不可欠です。
「仕組み」が整わないまま、数字上の加算率だけを追うと、現場の混乱と経営難を招く諸刃の刃となります。
3. 実装に向けた「問題解決」のステップ
今回の改定を「負担」ではなく「経営体力を強化するチャンス」に変えるには、以下の2軸が不可欠です。
✔︎ 生産性向上の「本質」理解
単なるツールの導入ではなく、現場のオペレーションをどう効率化し、支援の質に還元するか。
✔︎ 戦略的な賃金設計
処遇改善加算に依存しすぎず、その他加算の取得を通じて支援の質を上げる。持続可能な賃金体系の再構築。
「制度についていく」のではなく「制度を活用して強い組織を作る」視点への切り替えが、来年度以降の経営体力を決定づけます。
今回の改定は、国の本気のメッセージであるとも言えます。
「よく分からない」で止まっている時間はありません。よく分からないで止まっている時間はもうありません。貴社の現在の体制でどの区分が最適か、そして上位区分を目指すためのロードマップはどう描くべきか。
不安がある方は、まずは現状の見える化から始めていきましょう。
※参考資料
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定については、令和8年2月18日(水)開催の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第53回)」
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