【令和8年6月以降】新規指定の基本報酬マイナスは「ピンチ」か「チャンス」か?生き残るための設計戦略

以前投稿した、令和8年6月1日以降の新規指定事業所において、基本報酬を一部引き下げとなる応急的な報酬単価の特例(記事はこちら)という方針の具体的な内容が示されました。令和8年2月18日の報酬改定検討チームの資料に基づき解説します。

「新規はマイナスからのスタートなのか?」と不安の声も聞こえますが、本質を見誤ってはいけません。今回の応急的な報酬単価の特例は、単なるマイナスではなく、「サービスの質を担保しつつ、制度の持続 可能性を確保」と同時に、「生産性向上・賃上げへの強力な後押しへのシフトです。

 

1. サービス別:基本報酬の減算幅(令和8年6月〜)

今回の改定でターゲットとなったのは、収支差率が高く、事業所数が急増している以下の4サービスです

対象サービス
減算幅
児童発達支援 1.2% 減
放課後等デイサービス 1.8% 減
就労継続支援B型 1.6% 減
共同生活援助(介護サービス包括型、日中サービス支援型 2.8% 減

最小限の引き下げ幅に落ち着いたと思慮します。ただ、引き下げには変わりなく、これには「制度の持続可能性」という背景があります。国は、利益率が高く数だけが増えている現状にブレーキをかけ、その分を「質の高い支援」や「職員への処遇改善」へ振り分けようとしているのです。

 

2. シミュレーションで判明した「設計の重要性」

「基本報酬が下がる=売上が下がる」と直結させるのは早計です。
放課後等デイサービス・児童発達支援管を例に、現行と改定後(令和8年6月以降)を比較してみましょう。

※基本報酬が減額となっても、引き上げられる「処遇改善加算」を上位ランクで算定すれば、トータルの報酬は維持、あるいは微増します。(処遇改善加算は基本報酬+各加算の合計に加算率がかかるため、もう少し上昇します。)

つまり、これからは各種加算を緻密に設計し、賃上げ・職場環境の向上や支援の質をさらに高める移行を意味します。

 

3. 「新規」と「既存」、それぞれの方向性

今回の特例は令和8年6月1日以降に新規指定された事業所(既存事業所については従前どおり)が対象ですが、令和9年度における通常の報酬改定では、既存・新規の差を帳尻を合わせる方向で調整が進むことから既存事業所も予断を許されません。

新規開設を予定している方へ

最初から要件に対応できる体制を組める点は、むしろ強みでもあると考えます。
・「処遇改善加算」の最上位区分を狙える体制を構築する
・加算ロ相当の加算額の1/2以上を月給賃金で配分した賃金設計、「生産性向上」を前提とした人員配置で「ロ」区分を目指す
・基本報酬が下がるからこそ、各種加算を算定して支援の質を上げる意識を高める

既存事業所を運営している方へ

「うちはまだ減らされないから大丈夫」という油断は禁物です。
・「処遇改善加算」の最上位区分を狙える体制を構築できるかの整理。
・令和9年度の統合を見据え、今のうちに加算要件を精査する。
・児童分野であれば、12月施行の「こども性暴力防止法(日本版DBS)」等、法改正への対応を同時並行で進める。

 

4. 3つの突破口

この転換期に順応していくために、現場と経営で共有すべきアクションは以下の3点であると考えます。

  1. 加算算定のアップデート
    処遇改善加算の改定を算定の単に基準を満たすだけでなく、サービスの質向上(各種加算など)を追求する。

  2. 処遇改善加算の戦略的活用
    複雑化する要件を活用し、敬遠されがちな上位区分を確実に算定することで、人材確保と収益確保を両立させる。

  3. 徹底した業務効率化
    国が求める生産性向上は、今後の運営基準や加算算定の必須条件になりつつあります。無駄な事務作業を削り、直接支援の時間を最大化する設計を。

知っているかではなく「実行できるか」

今回の改定は、障害福祉業界の健全化に向けた転換点でもあります。制度の変更をただ受け入れるのではなく、新しいルールの中でいかに質の高い支援を追求し、持続可能な経営基盤を築くか。

この変化を、単なるコスト増と捉えるか、それとも自社の体制をアップデートする絶好の機会と捉えるか。その視点の違いが、次世代の障害福祉経営において、最も重要な資質となるはずです。

 

※参考資料
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定については、令和8年2月18日(水)開催の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第53回)」

 

 

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